特集 2026/05/26
学術フロンティア講義

30年後の世界へ — 教養は問い続ける

30年後、世界はどう変わるのでしょうか。世界と人間、学問の“悪”、共生、空気、ポスト2050、そして教養をめぐる問いから、未来を考える手がかりを紐解いていきます。

30年後の世界は、どのような姿をしているのでしょうか。

気候変動、AI、人口構造の変化、国際情勢、生命科学、文化や価値観の変容。私たちの社会は、すでに多くの変化のただなかにあります。しかし、未来を考えることは、単にこれから起こる出来事を予測することではありません。

むしろ大切なのは、未来を前にしたとき、いま何を問い、どのような視点を持つのかということです。30年後の世界を考えることは、現在の社会を見つめ直すことでもあります。

学術フロンティア講義「30年後の世界へ」は、東京大学 東アジア藝文書院(EAA)が主催するシリーズです。EAAは、東京大学と北京大学が共同で運営する研究教育プログラムで、「リベラル・アーツとしての東アジア学」を掲げています。

「30年後の世界へ」は、EAAの院長である石井剛氏を中心に構想され、専門分野の異なる研究者たちが集いながら、未来に向けた問いをひらく場として続けられてきました。

2020年の「『世界』と『人間』の未来を共に考える」から始まり、「学問とその“悪”について」「『共生』を問う」「空気はいかに価値化されるべきか」、そして「ポスト2050を希望に変える」へ。さらに、教養そのものを問い直す講義へとつながりながら、シリーズはその時々の社会の変化に応答してきました。

本記事では、その流れをたどりながら、各テーマから未来を考えるための問いを見ていきます。

シリーズ紹介

「30年後の世界へ」は、東京大学 東アジア藝文書院(EAA)が主催するオムニバス講義のシリーズです。世界と人間、学問の“悪”、共生、空気、ポスト2050、教養そのものなど、毎年異なるテーマから未来を考える問いをひらいてきました。

30年後の世界へ ―「世界」と「人間」の未来を共に考える

グローバリゼーションやテクノロジー、気候変動を背景に、「世界」と「人間」の関係を問い直します。30年後の世界を考えるために、人間が自然や社会、技術とどのように関わっていくのかを見つめるシリーズです。

コンテンツ(抜粋)
  • 人新世時代の人間を問う ― 滅びゆく世界で生きるということ
  • 30年後のための世界史
  • 宗教的/世俗的ディストピアとユマニスム

30年後の世界へ ― 学問とその“悪”について

学問は常に善であり続けるのか。知が持つ可能性と限界、その“悪”を見つめ直しながら、近代以降の学問や制度が生み出してきた問題を考えます。未来の知のあり方を問い直すシリーズです。

コンテンツ(抜粋)
  • 地球上の生命と人類は30年後にどうなっているか
  • 悪をめぐる三つのパラドックス
  • 「知」の歴史からみた学問の「悪」

30年後の世界へ ― 「共生」を問う

共生とは理想なのか、それともすでにある前提なのか。他者や自然との関係に含まれる困難や矛盾を見つめながら、「共に生きる」とは何かを問い直すシリーズです。

コンテンツ(抜粋)

  • いかにして共に生きるか ― 「食べること」と「リズム」について
  • 「他者」と共生する「私」とは誰か ― レヴィナスの思想を手がかりに
  • 仏教から見た共生:私ひとりで幸せになれるのか?

30年後の世界へ ― 空気はいかに価値化されるべきか

空気は単なる物質ではなく、人と人、社会をつなぐ〈場〉でもあります。交換価値に還元されない価値や、社会的共通資本としての空気のあり方とは何かを考えるシリーズです。

コンテンツ(抜粋)

  • 資本主義と空気の価値〜市場・国家・社会的共通資本〜
  • 現代アートにおける空気の可視化
  • ひとと空気の歴史社会学:空気にも歴史がある

30年後の世界へ ― ポスト2050を希望に変える

2050年以降の世界をどのように捉えるのか。不確実性が高まる時代に、未来を単に予測するのではなく、希望へとつなげるための視点を探るシリーズです。

コンテンツ(抜粋)

  • 人類はこれからどのような食生活をしていくべきか——次世代栄養学とOne Earth Guardiansからの提言
  • 藻と人間:惑星サルベージとテラフォーミングの倫理
  • 希望のロゴス——危機における「生」について人類の智慧が教えてくれること

30年後の世界へ ― 変わる教養、変える教養

教養とは何か。変化し続ける社会のなかで、知とどう向き合い、自分の考えを更新していくのかを問い直します。教養を、知識ではなく変化のプロセスとして考えるシリーズです。

コンテンツ(抜粋)

  • 30年後30歳になる君たちに90歳になる私ができること:新しい発達科学の創成
  • 脳を変える教養、AIに変えさせない教養
  • 「文理融合」とは何の謂かーー「脳化社会」の教養

問い続けるということ

学術フロンティア講義「30年後の世界へ」が提示しているのは、未来についての答えではありません。あらかじめ用意された結論があるわけでもありません。

世界と人間、学問の“悪”、共生、空気、ポスト2050、そして教養。扱われるテーマはそれぞれ異なります。しかし、そこに共通しているのは、未来をひとつの方向からだけ見ないという姿勢です。

問いはひとつではありません。視点が変われば、問いのかたちも変わります。ある分野で見えていた答えが、別の分野から見ると問い直されることもあります。教養とは、そうした往復のなかで、世界を見つめるための力なのかもしれません。

30年後の世界をどう考えるのか。その問いは、未来だけでなく、いまをどう生きるのかという問いにもつながっています。

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執筆者
UTokyo Channel 編集部
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