東京大学公開講座「成熟」
コンテンツ一覧
現代社会における成熟と人間
第1回 開講の挨拶
誕生―成長―成熟―衰退・死。このサイクルは人間にあてはまるだけでなく、自然に関わるさまざまな現象に、あるいは社会そのものにもあてはまります。そのサイクルを理解することは、人間や自然、社会を考えるうえで重要なことは言うまでもありません。 そのサイクルの中で、もっとも我々の注目をひいてきたのは誕生と成長でしょう。人の誕生はもっとも劇的で、成長は希望に満ちています。あるいは社会や経済の成長は人に希望を…
第2回 成熟の構図
誕生―成長―成熟―衰退・死。このサイクルの中で、「成熟」にはあまり注目が払われてこなかった。それは成熟が、ほかの段階と比べると、劇的な変化の少ない、いわば普通の状態であるととらえられたからである。しかし、成熟の中にこそ、新しい発想を得るキーがあるのではないか。成熟とは何か、それが何を可能にするのか、そしてそれがなぜ難しいのか。こうした視点から成熟の構図について考えてみる。
第3回 福祉国家の変容と「成熟」:大人になることの難しい社会と教育
現代社会の問題として、「大人になることの難しさ」がある。豊かな社会、多様な価値観を許容する社会の出現によって、共通の目標が喪失したこと、共通の大人のモデルが見つけにくくなったこと、大人と大人以前の境界があいまいになったことなどが原因の一端と考えられる。社会・経済の成長・発展(デベロップメント)と個人の成長・発達(デベロップメント)との予定調和を前提できた時代が終わりを告げようとしている。この講義…
第4回 経済の成熟と社会保障
少子化現象により、日本の人口は減少に転じようとしている。高度成長を経て成熟化した日本経済は、人口増加の終焉によって、あらたな成熟化を迎えようとしている。この変化は、日本人の生活水準にどのような影響を与えるのか。また、高齢者の増加にともなって医療・介護サービスの需要が増大する一方で、社会保障費用をおもに負担する現役世代の人口が減少していく環境で、社会保障制度をどのように運営していくのか。
「成熟」の諸相
第5回 動物の成熟と行動
哺乳類には様々な社会構造と配偶システムがあり、それに応じて種に特異的な行動様式が発達します。一夫一妻制をとる動物は少なく哺乳類全体の5%以下と考えられていますが、犬(イヌ科動物)もまた私たちと同じように(人が本当にそうかの議論は別として)特定の伴侶と継続するパートナーシップを築く例外的な動物のひとつです。ここでは私たちにも身近な存在である犬を例にとり、体と心の成熟過程を追ってみることにしましょう。
第6回 民主主義と成熟 メディア社会
21世紀に入り、異質な他者を承認しながら共生をめざす成熟した民主主義社会を支えていくためには、多元的な情報、および熟議に鍛えられた知識を社会全体で共有していく必要がある。そこでは、「公共知」を構築する卓越したジャーナリズムの役割は不可欠であろう。ところが、インターネットなどの情報テクノロジーが普及し、本格的なメディア社会が到来したにもかかわらず、ジャーナリズムという営為は皮肉にも成熟したとは言いが…
大人への成熟
第7回 自己の発達・成長-乳児から大人への変遷
我々は「自己」と「他者」をどのように弁別・理解しているのだろうか?自己概念の発達と脳機能の発達とはどのような関係があるのか?この講義では、「自己」と「他者」の発達的な理解を目指して我々が行っている発達認知神経科学的アプローチについて紹介する。具体的には、自己像認知を題材にして、乳児・幼児・成人を対象に行った行動実験と近赤外分光法を用いた脳活動計測実験について最新の研究成果について述べる。
第8回 配偶者選択と成熟
動物は交配する相手をランダムに決めてはいない。ある個体が、特定の性質をもった異性と交配しやすいとき、配偶者選択が行われていると言う。配偶者選択は性淘汰の原動力となり、生物の進化において重要な役割を果たしてきた。ヒトを含む様々な動物で、配偶者選択がどのような基準に基づいて行われているのか、これまでの研究例を紹介する。特に、配偶者選択における「好み」が、個体の成熟とともに獲得される場合に注目する。
文化の成熟
第10回 歌舞伎ー女形の成熟
歌舞伎の女形は成熟とともに、「娘」に象徴される、より若い女性を表現しようとしてきました。数え年で13 歳、14歳から17 歳、18歳の娘たち、成熟した男性俳優である歌舞伎の女形は、まだ幼さの残る少女たちを、どのように表現しようとしてきたのでしょうか。成熟した女優には表現することのできない世界、歌舞伎の女形の成熟した表現について考えてみることにしましょう。 こちらの動画の概要を特集記事でもご紹介しています…
第11回 閉塞と成熟―中国明代の詩と小説
中国文学の精華ともいえる古典詩は、唐代あるいは宋代において頂点をきわめてしまったのではないか。明代の詩人は、あたかも今日の文学者のような閉塞感を抱いていたとされる。だが、出版文化の隆盛を背景に、詩が明代に空前の普及を見せたことは、成熟の一つの形であり、さらには『三国志演義』『水滸伝』などの通俗小説が生み出されたのが、この時代である。日本の江戸文学にも深い影響を与えた中国明代の文学作品を材料に、閉…
第12回 成熟社会のまちづくり
成長社会から成熟社会に移行して、まちづくりの目標もそこへ向かう合意形成のありかたもおおきく変化しつつあります。本講義では、欧州社会の実情を参考にしつつ、日本におけるまちづくりの変化の現状をふりかえり、その背後に存在する成熟社会の目指すべき方向を考えます。
第13回 閉講の挨拶
東京大学公開講座「成熟」に、5週間にわたってお付き合いくださりありがとうございました。 「成熟」は、一般にはプラスの性質と考えられています。しかし、そこが最終的な到達点というわけでは無いとも考えます。 たとえば想像的な精神活動においては、成熟することが必ずしも必要というわけではありません。 「成熟」とは、いわば何かに至るための、プロセスそのものであるのかもしれません。 最後に、閉講にあたりまして、濱田…