東京大学公開講座「ホネ」
コンテンツ一覧
長寿を支えるホネ
第1回 開講の挨拶
ホラホラ、これが僕の骨だ 生きてゐた時の苦労にみちた あのけがらはしい肉を破って しらじらと雨に洗はれ ヌックと出た骨の尖(さき)(中原中也『骨』より) 今秋の東京大学公開講座は、「ホネ ― 万物を架橋する」をテーマとして開講することとなりました。 脊椎動物である人間(ヒト)にとって、ホネは生きている間ずっと肉体を支えてくれる不可欠な存在であることは言うまでもありません。人間はまた、自分たちの死後に通常残…
第2回 老いない体のつくり方 ―骨粗鬆症を防ぐ―
われわれはみな、生理的な老化とその先にある死を避けることはできません。しかし、病的な老化を避け、健康で暮らせる期間を長くすることはできます。骨粗鬆症に代表される骨の病的な老化は、老人の寝たきりの約1割をひき起こし、社会的・経済的に大きな問題となっています。本講義では、骨のできかた・骨の役割・骨の老化について学び、ついで世間で広まっている間違った骨の健康常識について吟味します。これらを踏まえたうえ…
第3回 関節の痛み、骨の痛み
厚生労働省の調査によると、国民が訴えている自覚症状で最も多いのは、男女とも腰痛、肩こり、関節痛です。これらの症状は、変形性関節症や骨粗鬆症によって起こります。本講義では、これらの痛みのメカニズムと対策について概説します。
第4回 顔のホネのしくみと病気
顔のホネの多くは手足のホネとは発生学的に異なり、その形も非常に複雑であり実に上手く出来ている。一見重たい骨の塊のように見える顔のホネは、少しでも軽くなるように実は中は空洞だらけで、眼、鼻、口や歯といった重要な感覚器官が収まっており、見たり、聞いたり、息をしたり、喋ったり、 食べたりできるように合目的的に作られている、このように重要な機能を持っている顔のホネが生まれつき、あるいは加齢、ケガや病気によ…
人の心の中のホネ
第6回 骨を抱きしめる-マダガスカルにおける墓制と遺体
インド洋西端海域に位置する島、マダガスカルでは、死後、親族が共有する集合墓に埋葬されることは、その人が単なる死者ではなく、「祖先」として社会的に位置づけられることと結びついています。だから、死者を看取った遺族のつとめは、その死者を遺族の集合墓に埋葬してやることなのです。しかし、様々な事情で、遺体をすぐに集合墓に埋葬できないことがあります。そのとき、マダガスカルの人々は死者とどう向き合うのでしょう…
第7回 先史時代の人々は骨をどのように扱ったか-再葬と祖先祭祀-
日本では火葬が一般的で、通常、骨を壺に入れて墓石の下に納める。意識しないにせよ、骨―墓に眠る遺体の一部―が、死者に対する哀悼なり追憶のよりどころとなっている。先史時代の人々も、埋葬によって遺体を土中に残したが、弥生時代には埋葬した遺体を骨にしてから再び掘り起こし、埋葬しなおす「再葬」が流行した。弥生人にとって骨を再葬した意味は何であったのか。世界の先史時代の埋葬と比較しつつ、検証する。
第8回 失業体験を支える心のホネ
リーマンショック以来、再び失業率が高まっている。失業はマクロな社会問題であると同時に、失業者個々人にとっては、経済的、社会的、心理的に大きなストレスとなる体験である。望まざる失業によって、心が折れそうになる人は少なくない。心のケアだけでは社会復帰は難しいが、心が折れてしまっては生きられない。自分の人生を再びしなやかに歩みだすためには何が必要だろうか。失業を通して、働くこと、生きることを問い直して…
ホネの硬さとしなやかさ
第9回 骨のかたちと硬さの秘密
からだの中には200個以上の骨があり、それぞれが独特の「かたち」をしています。骨は体の芯の部分にあって、体のかたちを保ち、生活に必要な動作を行う上で、大切な役割を果たします。このような働きができるのは、骨には他の臓器にはない、「硬さ」があるからです。骨折してもギブス固定などで治すことのできる骨には、かたちと硬さを作る巧妙な仕組みが備わっています。本講義では、骨が特別に持っている「かたち」と「硬さ」の…
第10回 貝殻、真珠の骨組み形成のメカニズム
無脊椎動物は硬い外骨格を有し、これによって体の形を作っています。軟体動物の貝類は貝殻で軟体部を覆うことで、外敵から防御しています。貝殻は主に炭酸カルシウムでできていますが、微量の有機物を含んでいます。この有機物を含むことが、生物が作る鉱物(バイオミネラル)の特徴であり、強い強度を示す原因になっているだけでなく、この有機物が貝殻形成の鍵を握っています。本講義では、貝殻形成の機構について解説します。
万物を架橋するホネ
第11回 化学から見た体の骨、細胞の骨、分子の骨
何億年も昔、海で生物が誕生したころ、海中にカルシウムはほとんどありませんでした。陸からカルシウムが流れ込むようになると、生物の細胞は異物であるカルシウムを細胞内から排除し、高度な運動機能の手段や内臓を守る骨として利用しました。これが骨を持つ脊椎動物の誕生とされています。しかし生物はカルシウムを手に入れる前から強固な分子構造の「硬い分子」という骨を持っていました。本講義ではそれぞれのレベルでの「骨…
第12回 テンセグリティ(Tensegrity):細胞と建築をつなぐ骨組み
テンセグリティ(Tensegrity)とは、1950年代にバックミンスター・フラーによって命名された、ちょっと風変わりな骨組です。建築の常識に合わない挙動を示す傾向があるため、50年もの間、誰も建築骨組に利用することが出来ませんでした。私達は、このテンセグリティ構造を世界に先駆けて建築骨組に応用することに成功しました。ところが近年、このテンセグリティが生体の細胞を支える骨格を形作っているという学説が現れました。…
第13回 閉講の挨拶
東京大学公開講座の話題は、毎回さまざまな学問分野にまたがっております。 本講座「ホネ」もまた、健康、歴史、建築、心の問題、宇宙など、幅広い話題を取り扱いました。 現代という時代は、食生活や労働環境という観点からすると、ホネにとっては「受難の時代」のようにも思えます。 あるいは、政治、経済、社会などが不安定で、「ホネがない」時代のようにも受け取れます。 本講座の閉講にあたってご挨拶を述べるとともに、そ…