東京大学公開講座「グローバリゼイション」
コンテンツ一覧
グローバル化と国家・社会・経済
第1回 入門・グローバリゼイション
現在、否応無しにいわゆる「グローバリゼイション」が様々な次元で、世界的な規模で進行しています。モノが国境を越えて動くだけでなく、ヒト・カネも大規模に頻繁に、しかも多様な方向へ移動しています。日本から半導体製造装置が中国に輸出され、それを使って作られた半導体が日本に入ってきて、さらにそれを組み込んだ薄型テレビがアメリカに輸出されたりです。その裏ではお金が動いていますし、技術を教えるために、人が派遣…
第2回 グローバル化する世界 -歴史家の視点-
グローバル化という言葉に要約される急激な変化は、時代を画する歴史の大きな分水嶺となるだろう。人間活動のほとんどあらゆる領域がその影響を受け、私たちの世界認識、活動の準拠枠は大きく変化することになる。このグローバル化を、歴史家の視点から大きな歴史の流れの中に位置づけ、この現象が世界の構造をどのように変化させ、日本社会や私たちの生きる社会環境をどのように変化させることになるかを考察する。
第3回 グローバリゼイションと法
「市場原理万能主義」の下に、「弱きを助け、強きを挫く」という法律学の本質とは逆の現象が生じている。ノーベル経済学賞教授らも、経済学の特権は「貧困問題との対決」として市場原理万能主義を批判している。例として「アジア経済危機」は、規制緩和の声に押し切られ、その結果として危機が生じたと指摘されている。 WTOの中にも規制緩和と規制強化という矛盾する協定がある。その理由となる背景と現実を知り、そこで得られる…
第4回 差異と同一からみた国家、市場および貨幣
二十世紀の人類への偉大な教訓は「資本主義生産様式は市場機構なくしては機能せず、この市場機構は自由な政治制度としか共存できない」ということです。市場に貫徹する資本の論理と政治力学から二十一世紀の国際政治経済の動態を読み解きます。分析視座は国境を超える最適通貨圏と最大アイデンティティ圏で、これらの概念から西欧連合と共通通貨ユーロ、および東アジアの行方を考えます。
グローバル化と食・農業
第5回 グローバリゼイションと日本農業
貿易自由化は我が国経済の発展に寄与したが、食料の海外依存度はカロリー・ベースで60%まで高まった。そして今、残された主要農産物の更なる市場開放が俎上に上がっている。規制緩和が産業を強くする側面は重要だが、圧倒的な土地条件の差は努力では埋められない。食料の殆どを海外に依存し、田園の失われた製造業とサービス業の国で、窒素過剰等の健康被害も深刻化するような大きな社会的コストを勘案せずに、狭義の効率のみを追…
第6回 経済のグローバル化と日本農業のゆくえ
経済のグローバル化はモノばかりでなくヒトやカネ、サービスまでもが国境を越えて自由に行き来することを目指しています。農業も例外ではありません。WTOやFTAといった取り決めの中で一層の市場開放が求められ、さらには東アジア共同体構想なども議論されています。こうしたグローバル化の中で日本の農業はどのように変わっていくのでしょうか。これからの日本農業のゆくえを考えてみます。
グローバル化と安全
第7回 グローバリゼイションと世界の新しい安全
国際関係の観点からグローバリゼイションを眺めると、主権国家という主要なエージェントの役割・機能の変容、そしてそれと並行して進行する国家間関係の変容が重要なポイントです。国際関係で、非国家組織や国境を跨いで社会を結びつけるさまざまなエージェントが重要になってきました。その中で、国家安全保障に集約していた世界の安全に関わる問題も大きい変容を見せています。国際関係の文脈では安全保障と訳されてきたセキュ…
第8回 グローバル化する大気汚染
アジアでの急速な経済発展に伴って大気汚染物質の発生量が著しく増大し、大陸規模・地球規模での環境影響が懸念されるようになってきた。人間活動により生成される大気中の微粒子(エアロゾル)は、太陽光を吸収・散乱し、地球を加熱・冷却したり、雲や降雨にも影響を及ぼす。このように、エアロゾルは気候に影響を与え、地球温暖化予測の大きな不確定要素にもなっている。一方、汚染物質から光化学的に生成されるオゾンは、その…
第9回 グローバルとローカルをつなぐ水循環の科学
自然現象と人間活動が相互に影響して生じる様々な水問題への危機感の高まりから、21世紀は「水の世紀」といわれています。飲み水の確保や洪水被害の軽減など、身近な水問題を解決に導くためにも、グローバルな水循環変動を考慮する必要があります。健全な水のガバナンスの確立のために、グローバルな水循環観測データと社会に必要なローカルな水情報をつなぐ地球観測データ統融合の先端科学の貢献が期待されています。
グローバル化と技術
第10回 グローバル化と日本の競争優位 -現場発の視点で-
経済がグローバル化することの一つの意味は、国ごと産業ごとの国際競争力の有無が顕在化することである。それは大昔から経済学の基本的なテーマであった。ところが実際にそうなってみると、伝統的な経済学では説明しにくい現象が多く出てきた。本講義では「日本は人工物である」というものづくり論の基本に戻り、現場発での日本の産業競争力を考えてみることにする。
第11回 音楽文化の「グローバル化」?-音響テクノロジー・音楽産業・地域文化-
レコードからCDへ、さらにネット配信へ…。音楽をめぐるテクノロジーや産業の発達とともに、世界各地の音楽文化は地球規模の一つのシステムへと組み込まれ、急速に変質している。しかし他方で、テクノロジーや産業の支配に背を向け、地域に根ざした文化として世界の一様化に抵抗する最後の砦としての音楽というイメージもまた根強い。この講義では、音楽とテクノロジーとの関わりの歴史を文化史的視点から考察することを通して、…
グローバル化と人
第12回 ヒトと動物の共通感染症の流行とグローバリゼイション
世界貿易機構の自由貿易拡大路線は家畜・穀物だけでなくペットや野生動物の輸出入にも影響している。我が国には世界各地から食品のみならず種々の動物が輸入されており、ヒトと動物の共通感染症の侵入する危険性が指摘されてきた。BSE、O-157、トリインフルエンザのように侵入を受けた例もあるし、狂犬病、ペスト、サル痘など、いつ侵入されてもおかしくなかった例もある。感染症拡大の背景、人類への警告、制圧の筋道、今後の課…
第13回 グローバル化社会の高等教育
中世に始まった大学はもともと国境をこえた存在だったが、その後、近代大学は国民国家の教育システムの一部として発展してきた。21世紀にはいって、大学はふたたびグローバル化の中で変容しようとしている。一方で大学の中核となる知識がますます普遍化しようとしているからだけではない。グローバル化とは、同時に国際的な市場化の側面をもつのであり、高等教育はますますその流れに巻き込まれようとしているのだ。そうした状況…
第14回 世界の持続的発展と『課題先進国』日本(閉講の挨拶)
公開講座「グローバリゼイション」をお聞きいただきありがとうございました。 最後に、閉講のあいさつにかえて、グローバリゼイションという時代における日本の国としての位置づけについて、「日本は様々な課題を持っている『課題先進国』である」という立場から考えていきます。