東京大学公開講座「特異」
コンテンツ一覧
特異に挑戦する-疾患治療と創薬-
第2回 医薬品の三次元構造-特異的生物活性-
私達の体内で蛋白質が極めて重要な働きをしていることはよく知られている。この蛋白質を構築する原料であるアミノ酸に、左手物質と右手物質に相当する異性体が存在することは御存知でしょうか。大きな社会問題となったサリドマイドや、新型インフルエンザに対抗する医薬品として多くの注目を集めているタミフルにも左手物質と右手物質が存在します。医薬品として使用されているタミフルはそのうちの一つです。なぜでしょうか。 …
第3回 薬の効果と副作用-個特異的医療の推進-
互いに良く似ていても個人はそれぞれに違うところがある。これは薬の効果や副作用発現にも当てはまる。個々の特徴は結局遺伝子のごくわずかな違いに由来し ており、最近では薬もその特徴に応じた使い方をすべきだと考えられている。では、具体的にどのようにするのか、多くの薬についてその方法論はそれぞれ発展 し続けているが、完成には至っていない。新しい「医者の匙加減」と言われる個人特異的な医療の目指す方向を薬効と副…
人間の不思議と魅力-特異を追い求める-
第4回 科学者を魅了し悩ませた特異現象
近代科学を作り出した科学者たちは、その際に新奇な特異現象に遭遇し、それらの意味を考察することで、自然に対する古い考えを捨て、新しい科学を構想していった。そのような例として天文学者ティコ・プラーエの目撃した新星や、新世界から流入する文物などをあげることができよう。これらの諸事例の考察を通じて、近代科学の誕生、そして科学の発展にあたっての新奇な現象の果たす役割について探っていく。
第5回 仲間外れ、天才に挑む: 土井不曇の反相対論
アルベルト・アインシュタインは、1922年の来日の際、熱狂的な歓迎を受けている。この熱狂の中、第一高等学校で教鞭をとっていた土井不曇は、かねてから準備した反相対論の議論を練り上げ、東京帝国大学での講演の際にアインシュタインに質問を行った。大学・大学院で土井の指導教官であった長岡半太郎は、来日する天才物理学者への反論を「国辱」とさえ表現し、土井周辺の人々も土井の無謀に見える企てを阻止しようと努めた。世…
宇宙と地球の特異点
第6回 宇宙の特異点、ビッグバンとブラックホール
宇宙は137億年前ビッグバンで始まり膨張して冷え続けて来たが、今わかっている物理法則ではビッグバンそのものはエネルギーが無限大の「特異点」となり、取り扱うことができない。また、ブラックホールの中心は特異点だが、うまいことにかならず観測できないようになっている。しかしホーキングによるといずれブラックホールは爆発する。そのときに特異点が現れるのだろうか。宇宙の進化から特異点の解消の研究の最先端を解説する…
第7回 全地球凍結イベント~地球環境の特異な変動現象~
かつて地球全体が氷に覆われていたという、きわめて特異な寒冷化現象の存在が明らかになってきた。これは「スノーボールアース・イベント」(全地球凍結イベント)と呼ばれている。約6憶、約7憶、約22億年前の、少なくとも3回生じたことが分かっている。それはいったいどのような現象であったのか、また氷に覆われた環境下で生物はどのように生き延びたのか、といった問題について、さまざまな地質学的証拠や理論的推定に基づいて…
第8回 超小型衛星による宇宙開発の特異点への挑戦
1機数百億円、開発期間5年以上という人工衛星による現状の宇宙開発は、国・大企業のみをユーザーとする非常に限られた利用にとどまり、一般の利用・産業 化・商業化も広がらない閉塞状態にある。東京大学はその閉塞を打ち破るべく、20kg以下の極端に小さな衛星の開発を進め、すでに2機の衛星の打ち上げに 成功した。そのような超小型衛星は通常の宇宙開発における特異的存在であるが、宇宙へ参入する「しきい」を根本的に下げ、新…
特異における多様性-法・経済・宗教-
第9回 法における「特異」の位置
民事法・刑事法等の分野で責任能力や過失認定などの基準を設定する場合には、法は「平均人」をモデルにした人間像を前提にしている。他方、個の尊厳や幸福追求権を謳う憲法は、人々がそれぞれ他者とは異なった「個性的な生き方」を追求することを人権として保障している。また、法は紛争処理において判断基準の定型化を志向する一方で、事案の特殊性を考慮した具体的妥当性の確保も「衡平」の名で要請している。本講演では、法と…
第10回 特異点なき宗教としてのイスラーム
仏教やキリスト教と比べた場合、イスラームの大きな特徴として、聖職者や教会制度を持たないということが挙げられる。このことを最もよく実感させるのはモスクであろう。モスクには、メッカの方角を示す窪みのほかには、崇拝の対象になるような必須のアイテムはない。一般にイスラームには、神に近づくための場所も仲介者も方法も存在しないように見える。なぜイスラームには特異な空間も制度もないのか、このあたりについて何ら…
第11回 金融危機という名の「特異」
今日、世界中が経済危機、金融危機に巻き込まれています。20世紀初頭の大恐慌以来の「特異」だといわれています。実際、数十年前までの経済学、さらには現代金融工学において、このような危機の可能性はほとんど考慮されていませんでした。よって、金融経済学者のなかにも、今日の現象を説明できず、目のうえのタンコブのように煙たがる人が、日本に大勢います。しかし、経済学の最先端では、このような危機や、バブル、クラッシ…
第12回 閉講の挨拶
第110回東京大学公開講座「特異」はいかがでしたでしょうか。 この企画は一年前から準備されてきたものですが、当初は「個別化医療」という企画委員長の専門分野に近いトピックから構想が始まり、最終的に「特異」というテーマに至ったという経緯があります。ここでは、そのような公開講座が開かれるまでのプロセスをご紹介するとともに、最後に、企画委員長自身の研究分野についてお話をさせていただきます。